【本メモ】『すぐ死ぬんだから』 ~老衰ではなく「衰退」であれ~

本メモ

こんにちは!篤影です。

 

今回は読書メモです。

ちょうど読み終えたので、備忘録として書きます。

 

初回は、内館牧子さんの作品「すぐ死ぬんだから」です。

本の概要

書名:すぐ死ぬんだから

作者:内館牧子

初版:2018年8月

発行所:講談社

定価:860円(文庫版)

私は文庫版で読みました。

読んだきっかけ

自分の死生観について揺さぶる出来事があったころ、

本屋さんで並んでいるのを見つけました。

また、内館牧子さんの作品を一度読んでみたいと思い、購入しました。

本のテーマ

・老いることについて

・赦しを与えることについて

こんな人におすすめ

・お嫁さん、もしくは姑さん

・60~70歳代の方

・年齢問わず「老い」との向き合い方を考えたい方

 

メインテーマは「老い」ですが、

渡る世間は鬼ばかり的なやり取りが繰り広げられる所もあるので、

嫁姑さんを入れています。

あらすじ

夫婦で長年店を営んでいた主人公、忍ハナ78歳。

今はお店を息子夫婦へ譲り、老後の生活を送っている。

 

老いに従うことに抵抗を感じるハナは、

ファッションなどの若作りに力を入れ、

商店街の集まりや同窓会だけでなく街なかでも一目置かれる存在に。

 

夫は、ことあるごとにハナへ

「結婚してよかった」「ハナは俺の自慢だ」

と声をかけるほどの愛妻家。

 

そんな夫婦に転機が訪れ、

家族までも揺るがす事実が発覚し、

過去と未来に向き合っていく。。

 

以降は読んでからのお楽しみです。

 

話は大きく分けて、3つの場面があると思っています。

1つ目は、「老い」について、同級生や同世代との比較を通して見つめる場面、

2つ目は、失ったものが残した過去、そして自分と向き合う場面、

3つ目は、赦しを与えて、残りの人生の次へ進む場面です。

得たもの

さまざまな「老い」がある

YESかNOかの二択があるように、

老いに対しても「抵抗する」か「抵抗しない」かの2択があります。

得たこととして、そのイメージがわいたことでしょうか。

 

主人公のハナは、「どうせ死ぬんだから」と老いに抵抗せず、

受け入れている人たちがうっとうしくてたまらない人間。

典型的な「抵抗する」人間です。

 

一方で、物語の途中で登場する同級生たちは

「抵抗しない」人として描かれています。

  

それぞれの立場が登場することで、

人物像や自分がその年代になった時のイメージが

おぼろげながら浮かんできました。

 

この物語では、どちらのスタンスがいいかは語られていません。

ただ私は、次のような「こういう老後がいいんじゃないか」という

メッセージを感じました。

老衰ではなく「衰退」であれ。

主人公のハナが、様々な転機と向き合った結果、

ある意味境地に達した場面があります。

それは、孫の一言がきっかけでした。

 

「祖母ちゃんの話聞いてると、老人はフェイドアウトする意識がすげえ大事ってわかるよな」

本文より引用

ここからハナは、自分ができることに改めて目を向けて、

次へ進んでいきます。

 

物語の冒頭からですが、

ここからも主人公のハナの突き進んでゆく姿勢が

じつに心地いいです。

 

「老衰」ではなく「衰退」。

 

私は、

衰退の中にあっても、自分と向き合い、

自分にできることを探し続けて動き出すハナの姿は、

オシャレをして「老衰」に抵抗していたころよりも、

いっそう活き活きとしているように見えました。

 

老衰へ対抗するかどうかは個人次第だけど、

心まで老衰する必要はない。

 

衰退に向き合うことで、

新たに始まる老後もあるということを

主人公の姿は伝えていると感じました。

各々の人生を歩んでいるからこそ。

物語の途中では、ひとり親家庭(母子家庭)が登場します。

 

複雑な状況の中ではありますが、

彼らが生きてきた軌跡に感情移入してしまいました。

 

その母子家庭で育った子は、

大きな仕事に就き、安定した生活を送っていましたが、

長年の大きな夢を持っており、葛藤が続いていました。

 

ハナは、様々な過程で彼らと会った際、

「相手の人生に対して他人は何の責任も義務もありません」

本文より引用

と語りかけ、ゆくゆくはその子の背中を押す事になります。

 

これは私にとって印象深いセリフでした。

まとめ

主人公のハナの心の声や、

女性ならではの掛け合いの裏にある葛藤などがリアルで、

とても楽しかったです。

 

初めて内館牧子さんの作品を読みましたが、

多くの脚本を手掛けられているので、

もしかしたらテレビの方が内館さんの作品との出会いは

多いかもしれませんね。

 

この本は、主人公と近い年齢の方々はもちろん、

老いに関して考えたいという方は、

きっと何かしらの気付きがあると思います。

ぜひ手に取ってみてください。

 

では、また!